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2023-09-27

水彩画

わたしのみずうみ

今年の12月に、2年ぶりに絵とオブジェなどの個展をすることになり、少しずつ用意を始めています。
時計の展示は慣れているけれど、絵や彫像などはたくさん制作していないので、ちょっとどきどき。
わーっと波のように来る焦りや不安を手放し、手放ししていったら、好きなものをのびのび作ってみようという気持ちになりました。

水彩画をとても久しぶりに描き始めています。
イラストレーター として仕事をしていきたいと思って、東京に暮らしていた頃、描きためたたくさんの水彩画を持って出版社を回り、仕事をもらいました。
小さなカットや特集ページのタイトル画、エッセイの挿絵に地図など、頼まれるままに必死で描いていました。水彩はわたしの仕事の道具でした。

憧れの仕事ではあったし、達成感も喜びもありましたが、楽しくはありませんでした。
仕事の依頼の電話が入ると、心がどっと疲れたようになって泣きたくなり、それは難しい宿題をこなさなくてはいけない子供のような気持ちだったかもしれません。
1冊の本まるごとの挿絵を入れる大きな仕事が来た時、もう無理だと思いました。
自分が何を描きたかったのかが全くわからなくなっていました。
そして、絵を仕事にすることを諦めて、東京を離れたのでした。

今、ずっとずっと初めの頃の自分の気持ちに触れています。
あの時、わたしは日記を描くように絵を描いていたのでした。
言葉にならない自分の想いを絵で捉えていたのでした。
自分の輪郭にそっと触れるように、内側のささやきに耳を澄ますように、少しずつ今また絵を描いています。
それは踊ることと似ていて、わたしがやりたいことはその一点で、ただ、自分が感じる振動を解き放ちたいのだと。

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