toggle
2020-02-06

『太陽の東 月の西』

月とビスケットさんでの展示、『絵本とわたし』がはじまりました。
10人の作家がそれぞれ自分の大切な絵本を選び、その本にインスピレーションを得て作品を作るという展示です。
わたしが選んだのは『太陽の東 月の西』というノルウェーの民話。
作品と一緒に、そのお話を選んだエピソードも展示させていただいています。
よろしかったら、どうぞお読みくださると、うれしいです。


『太陽の東 月の西』

絵本というよりは、物語の本になるのですが…
『世界童話宝玉選』という本が子供の頃うちにあって、それは厚さが7、8cmくらいある分厚く重い本で、世界中の童話を一堂に集めた何だかすごい本でした。
もう一冊、同じ形で『日本童話宝玉選』があり、その二冊を読み通すと、自分がちょっとえらくなったような気がしたものです。

夏休みだと思いますが、がらんとした部屋で、ぺたりと畳に腹ばいになってその本を読んでいたことを覚えています。
自分だけのどーんとした時間のかたまりがありました。

とりわけ気に入って、何度も読み返していたのが、ノルウェー民話の『太陽の東 月の西』でした。
魔女やトロル、深い森、お城、言葉を話す動物、魔法をかけられた王子…
それだけでわくわくするけれど、このお話に特にひかれたのは、主人公の娘が勇敢に旅をするところなのかもしれません。
白熊に姿を変えられた、夫の王子を探す、遠い険しい旅。
けれど、彼女を助ける存在がリレーのように次々現れ、そこもまた物語のおもしろいところ。

時計は、娘が白熊に求婚されて、彼のお城に向かうところを描きました。
娘がろうそくを持つのはこの場面ではないのですが、自分の道を照らしていく、凛とした感じのイメージが浮かんだので、描いてみました。
花嫁なので、おしゃれをして、ふんわりしたベールをまとったところがお気に入りです。


今回、この時計を作るにあたって、物語のことを調べてみると、デンマークの画家、カイ・ニールセンが素晴らしい挿絵を描いていることを知りました。
繊細で優美な、ニールセン独自の世界観に魅了されました。

そして、本のこと。
本は実家にはもうなく、調べてもわからないだろうと思ったのですが、インターネットはすごいですね。
1962年に小学館から出版された本でした。
画像も見ることができて、表紙や見返しの模様、見覚えのあるカラーの挿絵…懐かしさで泣きそうになりました。
この本は古本として売買もされていることがわかりましたが、でも、欲しいとは思わないかな。
きっと思い出の中の本の方がいきいきとして、輝いているに違いないですものね。

関連記事