フランスとインド (五)

◇パリを散歩
パリではもう一つ忘れられないことがあります。
それは一人で街を歩けたこと。
なあんだ、でしょうか。
外国の知らない街をリラックスして一人で歩くというのは、なかなかハードルが高いとわたしは思います。
外で一人になるのが怖くて、ひろしさんとはぐれないように、出かける時はいつも一緒にいました。だから、その日ひろしさんがピカソ美術館に行きたいと言った時は困ったなと思ったのです。わたしは美術館より街歩きがしたかったのです。
一瞬、怖いという気持ちがブルっと通っていった後、何でもないように、「じゃ、わたしは一人で街を歩いてみるよ」と言ってみました。そして、彼を美術館まで送った後、一人で歩き始めました。
歩いていると、あぁわたしはこんなにも一人で歩きたかったのだと、はっとしました。
惹かれる通りを次々歩き、気になる場所に足を止め、素敵なギャラリーを覗いてみたり。ようやくパリの呼吸ができたように思いました。
昔と違って、今の旅でとても助かるのは、スマホでGoogleマップが見れること。好きなだけ歩き回っても、自分の居場所が小さな青い丸で示されるというのは、何て安心で心強くて自由な気持ちになれることでしょう。
歩いていると広い公園があったので入ってみました。子供がたくさんいて、大人たちはベンチで本を読んだり、おしゃべりをしたり、思い思いに自分の時間を楽しんでいました。
冬だったけど日差しは温かく、公園は緑に覆われていました。

しばらくベンチでのんびりした後、アパルトマンがあるバスチーユの方へ向かいました。
その途中、素敵なお花屋さんがあり、1本でも買える?と聞いてみると、きれいな店員さんがお花がたくさんついたバラの枝を勧めてくれました。
「わぁ、うれしいな。今日はわたしの誕生日なんです。今旅行中だけど。」と言うと、その店員さんは赤い大きなバラを一本抜き取り、「おめでとう。これはわたしからよ。」とにっこり微笑みました。
温かな気持ちとバラの花束を胸に抱いて歩いていると、自分がパリに住んでいるかのようで、何だか誇らしいような、おかしいような、思わずスキップしたいような気持ちになったのでした。
パリを離れる前の日、ひろしさんとセーヌ川沿いの遊歩道をずっと散歩しました。
これは絶対しようと決めていたこと。
バスチーユの駅の方へいつもの道を歩き、運河に出ます。美しい船がたくさん停泊していました。仕事用ではなく多分、自家用船。自分の船でセーヌ川を遊覧するなんて、何て贅沢で優雅なことでしょうか。運河に沿って歩いていくと、サン・ルイ島の辺りのセーヌ川に出ました。
川沿いの道はずっと石畳で、マラソンをしている人や犬の散歩をしている人もいます。
冬だけど意外と暖かく、朝の川沿いの散歩はほんとにいい気持ちでした。
パリは東京に比べるとずっとコンパクトなので、このまま川沿いを歩いていくと、そのままルーブルやオルセー、エッフェル塔、凱旋門の方も行けそうです。私たちは4区の辺りから街に入りました。
パリはカフェとお菓子屋さん、パン屋さんがとても多いことがわかりました。
特にカフェは外のテーブル席が混んでいます。皆外の席でお茶したり、食事したり、夢中でおしゃべりしたり。寒くても気にならないみたい。
ゴッホの絵で『夜のカフェテラス』という作品がありますが、夕暮れ時のカフェはまさしくそのもの。フランスはカフェ文化の国なのだなぁと納得したのでした。
私たちも体が冷えてきたので、カフェに入りました。小さいかわいい席に案内されます。ひろしさんはエスプレッソを。私はショコラショーを。
◇Merci France
フランスのどこかの女の子に、そんな気持ちで持って行ったバレリーナの時計は結局誰かにプレゼントすることはありませんでした。
何かそんなご縁がなかったのです。
でも、もしかしたらまた別な時にそんな機会があるかもしれません。
そして、またフランスに来る時があるのかもしれません。
旅のしばらく前からフランス語の勉強を始めました。そして、帰って来た今もそれは続いています。
使うことがあるのかないのかわかりませんが、フランス語に触れることが何だか楽しいのです。
男性名詞と女性名詞があるなんて、とっても不思議でおもしろい。
旅はまだまだ続くよ
à bientôt !












