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2026-02-25

フランスとインド (二)

◇アパルトマン

アパルトマンの石造りの建物は古いけれどしっかりしていて、中はとてもきれいに改装されています。
コンパクトなキッチンと居心地のいいソファのあるリビング、カーテンで仕切られたベッドルーム、清潔なシャワールームとトイレ。

テーブルの上のお皿にはチョコレートや焼き菓子、お茶のパックが盛られていました。

間接照明のランプを灯すと部屋は一層心地良くなり、暖房は窓辺のパネルヒーター一つだけどとても温かです。

ホテルではなくアパルトマンを選んだのは理由がありました。
まず、今はユーロがとても高くて、物価は大体日本の二倍くらいの感覚。フランスにいる間は自炊しようと思っていました。
でもそれよりも、フランスで「暮らすように」滞在してみたかったのです。

ご飯を作ったり、お茶を淹れたり、散歩して帰ってソファでくつろいで読書したり。
そんなふうに。

そういう訳で、着いた早々、私たちは食材を買い出しに出かけました。
しかし、外国で初めての場所。どこに何があるのかまるでわかりません。

何となく歩いていると、子連れの黒人男性を見つけました。
「エクスキューズミー!」
小走りで駆け寄る私。
「スーパーを探しているんだけど」

「そこの信号を渡って右に行ったところにあるよ」

「え?」

「だから、そこの…いいよ、俺一緒に行ってやるよ」

「ありがとう!」
すぐのところに赤い文字で書かれたcoopがありました。
フランスのコープも日本のコープのように安心できる気持ちいい感じが漂っており、野菜も量り売りしてくれます。

男性の店員さんが笑顔で「ボンジュール」と言うと、と私も「ボンジュール」と笑顔で返し、気分はすっかりパリジェンヌ。
しばらく店内をうろうろして、野菜の入ったトマトソースの瓶、卵入りのフィッ.トチーネの乾麺、りんごと玉ねぎ、それから、地元で作られていると思われるカマンべールチーズを買いました。全部で10ユーロくらい。(1ユーロ約185円)

帰り道はもう日が暗くなってきていて、町には灯りが点り始めています。

お腹も減ってきたし、アパルトマンに戻りご飯にしよう。


フランスにもcoopが

しかし、ここでもトラブルが…

さっそく鍋に水を張り湯を沸かそうとしましたが、IHコンロの使い方が全くわかりません。

二人でああでもない、こうでもないとボタンを押し続けてみたものの、お手上げです。

これが使えなければ、3日間食事が作れないことになります。
ふと…私は「誰か助けて〜」と言いながら、玄関の扉を開けてみました。

よくわからないけど、何かそうしてみたくなったのです…

と、階下で足音が。
誰か階段を上がってくるではありませんか!

「エクスキューズミー!キャンユーヘルプミー?」

自宅に帰ろうとしていたもしゃもしゃ頭の若者を部屋に引っ張り込み、状況を説明します。彼は当惑しつつも親切にコンロの使い方を教えてくれました。
アパルトマンの階段を誰かが通ることは滅多にないことでしたし、玄関の扉を開けなければ、足音が聞こえることもなかったでしょう。全く驚くようなタイミングでした。
彼が出て行った後、あきらめてベッドに横になっていたひろしさんが寝室から声をかけてきました。
「あれ?今誰か来た?」
「うん。来たんだよ…天使がね…」

その夜、慣れない場所で、簡単なキッチンだけど、ほかほかのトマトのフィットチーネとカマンベールチーズ、デザートにりんごが食べれたのでした。
初めて訪れたフランスの町で助けてくれた親切な人たちのことを思い出すと、今も胸が温かくなります。

(つづく)

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