フランスとインド (四)

◇パリ
パリではのんびりなんてしていられません。
何せ、見たいものや行きたい場所が無数にあるのですから。
有名な所ではオルセー美術館とヴァンプの蚤の市に行くことができました。
オルセー美術館は35年ぶりくらいでしたが、やはり素晴らしかった。ゆっくり観ていたら時間が足りなくなって、最後の方は走りながら観ていました。
煌めくようなたくさんの絵画の中で、ルドンとボナールの絵に特に惹かれました。
蚤の市ではたくさんのお店がありましたが、欲しいものは見つからず。
ただ一つ心惹かれたのは古い本。ナイフでページを切り開きながら読む本で、黄色くなった紙に印刷されたフランス語が美しくて。内容は全くわかりませんけど…
ヴァンプの駅から蚤の市に向かうまでにマルシェがあって、たくさんのお店が並んでいました。
一つ行列ができているお店があって、その場で丸いガレットを焼いて売っています。20cmくらいの丸くて甘くない食事用のガレットです。私たちも並びました。
後ろの白髪のマダムが「あなたたちも並んでいるの?」と聞いてこられます。「はい。そうなの」と言うと、にっこり。
ガレットの他に、四角い白いパン生地に何かを包んで巻いてあるものがあって、「これは何?」と聞いてみました。マダムもお店の人も一生懸命説明してくれましたが、わかりません。買ってみたら、牛肉と野菜が巻いてあってとてもおいしかった。
ほかほかのガレットはお腹に抱えていると温かくて、道端でちぎりながら夢中で食べました。
◇パリのアパルトマン
パリのアパルトマンは最初はちょっとがっかりでした。部屋はごちゃごちゃしており、造花がたくさん飾られていて趣味が悪かったのです。
赤い照明も嫌だったし、何より、着いた日の夜に通りで何かイベントがあったらしく、明け方まで車が行き交い、酔っ払いが大声で歌を歌ってタバコの煙がもうもう立ち込めていたのです。
耳栓をして眠りながら、あぁどうしてこんなところに宿を取ってしまったのだろうと悲しい気持ちになりました。
こんな時は自分と話してみます…
そうだね…がっかりだよね。せっかくのパリなのにね。
これは闇の部分。じゃ光の部分はどんなところ?
部屋は温かく、キッチンやバストイレはきれい。調理器具もまあまあ揃ってる。
造花の入った花瓶は全て押入れに片付け、赤い照明の傘ははずし、代わりにバゲットが入っていた茶色い紙袋を灯に気を付けながらかぶせてみると、すっきりして感じ良くなってきました。
そして部屋を箒で掃いてからモップで水拭き。木のテーブルに敷いてあったプラスチックのランチョンマットも片付けます。
造花の花瓶が飾られていた棚に、蚤の市で買った本とピンクのバラをグラスに入れて並べてみると、部屋は見違えるように気持ちよくなりました。
そして、不思議なことに、あんなにうるさかった外の通りも、その日から嘘のように静かになったのです。
まるで、世界が変わってしまったみたいに。

◇闇と光と
実は、フランスに着いた日の印象も最初はあまりよくありませんでした。
早朝暗い時間に着いたパリはどんよりして小雨混じり。
空港でひろしさんとはぐれて心細い思いをし、SIMがうまく繋がらず通信ができません。ようやく合流できて、アングレーム行きの列車が出るモンパルナス駅へ向かおうとチケット売り場へ。
空港から街まで出る地下鉄が16ユーロすることにショック。
駅では大都会特有の他の人への関心のなさが雑踏に漂っていて、若い女の子が地べたに座り物乞いをしている姿や、都会の暮らしからあぶれてしまった浮浪者の人たちの荒んだ感じに胸が痛みました。
トイレはなかなかなくて、あっても有料。
街の汚さや人混みで気持ちがネガティブに振れ、きれいなトイレがいたる所にある日本ってすごいんだなと思いました。
嫌だなと感じている自分とじっと一緒にいると、その感覚がずっと昔の不安や痛みだったことに気付いたり、今それを感じる必要なタイミングだったことに気付いたりすることがあります。
深い息をしながらそれを味わっていると、やがてその感覚は淡くなって消えていく。
じゃ、どうありたい?
わたしは 気持ちよくありたい
わたしは 丁寧でありたい
わたしは わたしを大切にしたい
(つづく)










